今、最も転ぶ男
いや、転ばされるという表現が正しいな。前線を駆け回る選手はよく転んでいるイメージがあるけど、彼がダントツ多いと思う。仕掛ける、トップスピードで入っていく、球際で勝負する。危険な所にボールを運べば自ずとそうなるんだと思う。
この大切な試合でもなんども転ばされた。相手の足がスパイクに入ればピッチサイドには「パァーーンッ!」という高く乾いた音が響き渡る。その度に思わず「痛ッ!」と痛くもないカメラマンの自分が呟いてしまう。ホント、そういう音。
何度目かのファール、後半30分あたりにもらったやつは明らかにこれまでと違った。残りは15分。引き分けは終わりに等しいこの試合でチームが時間を惜しんでいることはよくわかっている。どうにも立てなかったんだけど、再開を送らせてはいけない、時間を無駄にしてはいけないと感じていただろう彼は、無理矢理起き上がり、足を引きずったままプレーに戻っていく。
動かない足。その足にか、自分の不甲斐なさになのか、苛立つかのように「アァァァーーーーーーッ!」と吠えた。アレを聞けばサガミスタなら、いやサッカーを、スポーツを愛するものなら心が感じずにはいられない。
見た目はちょっと厳ついけど全然そんな感じじゃない。普段は優しくて思いやりのある若者。得点だけじゃない。サイドバックも、守備もできて、クロスもあげられれば、ロングスローも投げられる。ギャップと直向きさ、そしてハートの熱さがなんといっても魅力なんです。才藤龍治はそんなプレイヤーなんです。
photo & text by hori