人の上に立つのに相応しい人格を持ち合わせ、立ち振る舞いができる人物。それが富澤清太郎だ。
チームキャプテンとしても、ゲームキャプテンとしてもチームを引っ張ってきた富澤くんには昭和の匂いが強く漂う。
ピッチでは激しくプレーし、味方を鼓舞する。でも彼の人間性はピッチ外での方が見えやすい。
ホーム最終戦、選手サイン入りTシャツをボランティアスタッフのみなさんへ手渡しするのだけど、一人一人の顔をみて、気持ちを込めて渡しているのが伝わってくる。
昇格を決めた後のフラッシュインタビュー、一緒にこの昇格レースを盛り上げてきた他チームへの配慮がまず先にくる。
ロッカーアウトするときも、カメラを構えている僕の肩に撮影の邪魔にならないような軽いグータッチをして、他の選手、スタッフと同じように扱ってくれる。
そういう他者への配慮、さりげない配慮が言葉と行動に滲みでる。
今回の移籍、多くを語らずに去っていった富澤くん。彼が最も長く在籍した古巣は、今、あまりよくない話でサポーターを不安にさせている。
この38歳の彼が、J2への昇格を成したチームの支柱の彼が、このタイミングでの移籍が、誰を、どういった心境にさせるのか、一番よくわかっていると思う。
けど雄弁に語る人物じゃない。まっすぐで、誠実な言葉と行動でチームを引っ張ってきた。
恐らく頼られたんだと思う。頼られて、それに応えたくて、これまでの自分の人生、お世話になったチームのこと、関係者、チームメート、サポーターのことを考え、自分の決断が許されるか、理解してもらえるか考えたんだと思う。だからああいったフワッとした抽象的なコメントだったんじゃないかな。言い訳したくないんだろうね、他人にも、自分にも。
どうか察してあげてください。富澤清太郎は男です。